菜の花忌

かなりローカルな話。
バレンタイン前のこの時期になると
近鉄奈良線八戸ノ里駅から南側では
あちこちで菜の花が咲く。

駅から菜の花が咲く道を南へ歩き
高校のグランド添いに西へ向かう。
閑静な住宅街の中
小さな林に溶け込んだ建物が見えてくる。
司馬遼太郎氏の自宅と記念館がある。
 
司馬遼太郎氏の自宅に隣接する
シンプルで壮大な記念館は安藤忠雄設計。
司馬遼太郎氏の蔵書6万冊の中から
2万冊が天に向かって高く伸びた壁に
整然と並べられている。
  
司馬遼太郎氏の命日2月12日を
「菜の花忌」という。
この日が近づくと
記念館の方々や近隣の方々が
心を込めてお世話されている菜の花が
記念館敷地内はもちろん周辺の住宅街や
広いエリアのあちこちで満開になる。
 
学生時代からずっと
司馬遼太郎作品が好きだった。
生前にこのご自宅の場所を知った時は
あまりに近くで驚いた。
偶然に駅前の喫茶店で
お見かけしたことも数回あった。
あれから何十年。
ずいぶんと時間が過ぎた。
 
相変わらず私は
お気に入りの司馬作品を繰り返し読む。
もちろん他に読みたい本だってある。
でもまだ山程ある未読の司馬作品を買う。
まだまだ先は長い。

今も記念館に行く。
たまに行く。そして何度も行く。
他の記念館のように観る場所ではない。
なんだろう。
蔵書に圧倒されながら天井を眺める。
ゆっくり庭を眺める。そこで本を読む。
ただそこに居たい。不思議な場所。

今年も菜の花がきれいに咲いている。