松屋町

事務所の前の道を下っていくと
急な坂を降りた先に信号がある。
 
北から南への一方通行5車線の
ここが松屋町筋。
外側2車線は右左折と
買物客やお店の駐車スペースになり
ほぼ中央3車線に車が走る。

松屋町は「まつやまち」
でも、この卸屋街の界隈は
「まっちゃまち」と呼ぶのが正しい。

学生時代。
文化祭や体育祭、修学旅行と
イベントの前には買い出しに来た。
賞品はもちろん、紅白の幕や
団扇に半被、カラフルなモールから
くす玉に至るまで何でもある。
  
その時の楽しさを忘れられずに
大人になってからも花火を買いに来たり
とにかくウロウロしていた。 
お人形やおもちゃで有名だが、
最近まで本当に色々な店があった。
心斎橋筋よりも歩くと面白い通りだった。

駄菓子などお菓子の卸をはじめ
輸入ナッツやドライフルーツ専門卸。
ベビーカーや自転車の乗り物卸。
結納用品。梱包材。
包装紙や袋などの紙製品卸。
スキーやゴルフ、テニスなど
専門のスポーツ用品卸もあった。
  
毎年、年明けのこの通りは
桃の節句にと、雛人形を見ながら歩く
赤ちゃんを連れたご夫婦や
おばあちゃんおじいちゃんの姿が多い。

3月を過ぎたら
今度は5月の端午の節句。
鯉幟、鎧兜や武者人形を選ぶ家族で賑わう。
  
梅雨前からは夏に向けて
ビニールプールや浮き輪
大きなビニールの鮫や鯨。
水中眼鏡やシュノーケルに足ひれ。
そして花火が所せましと店に並ぶ。
 
夏が終わればクリスマス一色。
ツリーやイルミネーション。
大きなサンタやトナカイのぬいぐるみ。
その傍らに正月飾りや凧
来年の干支の人形や置物などもあり、
12月25日を過ぎたらもうお正月一色。
 
松屋町は一年を通して
いつも季節を先取りした
にぎやかな通りだった。
卸屋さんの間に食堂や寿司屋、
うどんに蕎麦屋さんもあった。
地元の人が通うのだから当然美味しい。
  
弊社の事務所が長堀にあった頃から
少しずつお店は引っ越しや廃業で減り、
マンションや事務所ビルが建った。
  
いまも残っているお店は
変わらず季節先取りで頑張っている。
往時の「まっちゃまち」の面影が
ほんの少し残っている。

ここにも残したい風景がある。 

源平咲きの桃

源平咲きの桃

自宅近くのそこそこ大きな公園。
遊歩道のある川の両側に公園が広がり
遊具や芝生のある癒しのスペースに
野球場やテニスコートも。
 
随分と昔からそこにあったであろう
枝を広げた大木がたくさんあり
子供の頃によく登って𠮟られた。
    
公園にはこれでもか!と言うほど
たくさんの桜の木がある。
春になると息苦しくなるくらいに
桜の花が公園中で咲き競う。
今年の桜も本当に見事だった。
 
子供の頃から桜の季節になると
公園を通り抜けて
一目散に会いに行く木がある。
桜ではなく公園の外れにある
大きな一本の桃の木。
   
1本の木にピンクと白の花が咲く
子供には魔法がかけられたような
不思議な桃の木だった。
 
「今年は白だけかも…」
 いやピンクだけかも…」
魔法が解けていないかドキドキしながら
急ぎ足で会いに行く。
  
中学生の頃この咲き方は
「源平咲き」と呼ばれると知った。
 
平安時代の源平合戦
源氏が白旗、平氏が赤旗だったことから
そう呼ばれるらしい。
桃をはじめ、梅・椿・躑躅にも。
   
どうしてそうなるのか。
生物学的な理由があるのだけれど
ぜんぜんロマンチックじゃないから
忘れてしまうことにした。
   
今年も淡いピンクと白の花が
1本の木で仲良く咲いている。
つかみどころがなく
美しすぎて切なくなる。
 
源氏と平氏の旗色が仲良く咲く。
とても穏やかで平和な春。
今年も咲いてくれてありがとう。
魔法がかけられた桃の木。