残したい風景

大好きな通勤路も
雨が降っている時や
これから暑くなる季節で
太陽が真上にある時は
大人の判断で地下鉄に乗る。
 
乗り換えで結構地下道を歩き
ホームで待つ時間を考えると
時間的にも歩く距離も
地上を歩くのと
そんなに違わない気がする。
でも雨に濡れることも
直射日光で汗だくになることもない。
 
それでもちょっと爽やかな日には
通勤路を歩きたくなる。
 
こんなに何年も歩いているのに
足元に重なっている歴史と
その時代の様子が浮かんできて
いつだって新鮮な時間になる。
 
でもしばらく通っていない道を歩くと
大好きだった町家がなくなり
建築予定の看板があったりする。
 
取り壊したばかりの工事現場は
日本家屋を立てる時と異なり
地面を掘り返し鉄骨を打ち込み
コンクリートで固められて
胸が痛くなる時がある。

上町台地はどこを掘っても
時間を遡った色々な時代からの
メッセージが出てくる。
遺物が見つかったと申告すれば
調査などで工期が遅れるからと
見なかったことにする場合が多いと聞く。

そこにまた建物が立ち
歴史の層がひとつ重なっていく。
以前は次の時代へ残さないと…と
憤りを覚えたけれど
よく考えてみると今までも
そうやって歴史が積み重なってきた。

残念な気持ちに変わりはない。
大切に残したい気持ちも変わらない。
でもいつか遠い未来にここを歩く人が
今の時代を歴史の1ページとして
感じてくれますように…と思う。

今この時代に、ここを歩き
遠い時代へと想いを馳せてみる。
 
暗越奈良街道や熊野街道を
歩いた人がたくさんいる。
街道ができるもっともっと前
上町台地が海に突き出た
半島だった時代にも歩いた人がいる。

今そこを歩いていることが
光栄だと、幸せだと思う

ポチっと

ポチっと

仕事をしている時
なんとなくラジオをつけている。
シーンとしているよりも
雑音がある方が集中できたりする。
雑音の多い電車の中や
カフェで本を読むのも好きだ。

ラジオだけでなく周りの音を
聞いているような
聞いていないような感じ。

でもラジオの本紹介コーナーは
なぜかタイミングよく
一瞬集中が切れた隙間に入り込み
全集中力をもっていかれて
ダンボの耳になる。

好きな作家や好きなジャンルの本だと
手を止めてガッツリ聞いてしまう。

読みたいと思ったらもう止まらない。
すぐにAmazon
新品が許せる価格ならポチッ。
許せない?価格なら
中古本を探してみる。

こうしてポチッとした結果
ポストに届く本が本棚の前で
順番を待って重なっている。
絶対に読むのだけれど溜まる。

月3冊以上買わないルールを
一応作ってはいるけれど
展示会図録や古本の絶版など
買った月はかなり本代がかかる。
 
でも図録は通勤で読めないから
結局は月3冊単行本を買う。
そして月末の引落し金額を見て
寒くなることもある。

これはいけないと思い
家の本棚にどっさりある
好きな作家の本を月に1冊
読みなおすことにした。

でも…よく考えてみると
月3冊でも年間36冊しか読めない。
人生あと何年…と考えると
急いで読まなくてはいけない。

…とあれこれ言い訳をしながら
今月3冊目をポチッとした。