
大好きな通勤路も
雨が降っている時や
これから暑くなる季節で
太陽が真上にある時は
大人の判断で地下鉄に乗る。
乗り換えで結構地下道を歩き
ホームで待つ時間を考えると
時間的にも歩く距離も
地上を歩くのと
そんなに違わない気がする。
でも雨に濡れることも
直射日光で汗だくになることもない。
それでもちょっと爽やかな日には
通勤路を歩きたくなる。
こんなに何年も歩いているのに
足元に重なっている歴史と
その時代の様子が浮かんできて
いつだって新鮮な時間になる。
でもしばらく通っていない道を歩くと
大好きだった町家がなくなり
建築予定の看板があったりする。
取り壊したばかりの工事現場は
日本家屋を立てる時と異なり
地面を掘り返し鉄骨を打ち込み
コンクリートで固められて
胸が痛くなる時がある。
上町台地はどこを掘っても
時間を遡った色々な時代からの
メッセージが出てくる。
遺物が見つかったと申告すれば
調査などで工期が遅れるからと
見なかったことにする場合が多いと聞く。
そこにまた建物が立ち
歴史の層がひとつ重なっていく。
以前は次の時代へ残さないと…と
憤りを覚えたけれど
よく考えてみると今までも
そうやって歴史が積み重なってきた。
残念な気持ちに変わりはない。
大切に残したい気持ちも変わらない。
でもいつか遠い未来にここを歩く人が
今の時代を歴史の1ページとして
感じてくれますように…と思う。
今この時代に、ここを歩き
遠い時代へと想いを馳せてみる。
暗越奈良街道や熊野街道を
歩いた人がたくさんいる。
街道ができるもっともっと前
上町台地が海に突き出た
半島だった時代にも歩いた人がいる。
今そこを歩いていることが
光栄だと、幸せだと思う