ワードネットの前、熊野街道が通る道は安堂寺通といいます。
長堀通の一本北側、上町筋から谷町筋を越えて、松屋町筋まで東西に走る長い坂道です。高低差がかなりあります。ちなみに「通」がつく道は東西。「筋」がつく道は南北です。
安堂寺通もかなりの坂道ですが、長堀通へ出る南の道は急勾配。もともと長堀通は運河だったので、土手から運河に降りた道です。当社から西へ下っていくと、松屋町筋まで3本の南北横道があります。南つまり長堀通へは、一本は坂道。二本目は船着き場の面影を残す階段。三本目は長堀通の向こう側、つまり対岸に渡る橋。運河だった頃の面影が濃く残っています。
この二本目の階段の手前に、このあたりで『えのきさん』と呼ばれている『榎木大明神』があります。御神木は樹齢700年弱(実は楠木ではなく槐(えんじゅ)だそうです)。楠木正成が植えたとの逸話もあります。小さなお社は御神木に住んでおられる巳さん(白蛇)がご神体です。
この階段を通る南北の道は『お祓い筋』と言われ、平安末期に、後白河法皇・後鳥羽上皇が熊野詣をする際に清めのお祓いをした由緒ある場所。そして、この御神木は紀州熊野詣が盛んだった往時、お伊勢参りで生駒山の暗峠を目指す人達の目印になったそうです。
また第二次世界大戦の大空襲の際、西からの炎が『えのきさん』の前でピタッと止まり、この一帯は延焼を免れ、古い町屋や神社仏閣がいまなお多く残っています。
『えのきさん』は今もこの界隈の守り神です。石段を通る人は皆、自然と足を止めて手を合わせます。もちろん私も。