ビルの西側

今の事務所に引っ越してきた頃
ビルの西側には町家があった。
並んだ事務所ビルとのギャップが
絶妙にいい感じだった。
 
町家の1軒は電気屋さんだった。
「東芝」の古い看板が好きだった。
土間の壁には大きな木の棚。
その棚には電球や電池が並んだ
昔ながらの電気屋さんだった。
  
3軒あった町家はコロナ禍に
2軒が取り壊しになり
半年ほどでコインパーキングになった。
 
残った1軒はしばらく頑張っていたが 
2年前に取り壊された。 
町家一軒分しか間口がないその土地に
ビル建設予定地の看板が立ったが
何故かここもコインパーキングになった。
  
そのうち2つのコインパーキングが
ひとつになり、また更地に戻り
またコインパーキングになり…。
スクラップ&ビルド?な感じで
忙しく変わってまた更地になった。
  
予想はしていたけれど
夏前にマンション建設予定地の
看板が立った。

でも工事開始予定の
12月になっても更地のまま。
ひょっとして…と思っていた。

そう。やっぱり出た!
ここはそういう場所だもの。
しばらく発掘調査が行われる。

だってこのあたりは
太閤秀吉が作った背割下水に
今も水が流れる大坂城の城下町。
その前は石山本願寺の領地だし
遡れば難波宮の端に位置している。
 
歴史が重なり重なり眠る場所。
掘れば色々なものが出てくる。
あれこれ想像してワクワクする。
 
事務所の西側に窓がないのが残念。
でも、もし西側に窓があったら
きっと仕事にならない…。