イルミネーション

毎年この時期になると
御堂筋の渋滞に紛れ込み
アメリカ大使館あたりから長堀通まで
ゆっくりゆっくり光を楽しむ。

いつもなら流れの良い車線に移動し
早く目的地へ着くように走る。
でもこの時期は徹底して左側道
ずっとキープして走る。

御堂筋イルミネーションは
2009年に始まり歴史はまだ浅い。
今ではなくてはならないイベント。
銀杏の木はさぞ迷惑だろうと思いつつ
幻想的な景色を楽しみながら
一年の出来事を振り返りながら
変わらず年末を迎えられることに感謝する。

夜の闇にともす火や灯りに
特別な意味を込めて
想いや願いを託してきた文化は
世界各地で共通している。
焚火の周りに集い、神前に燈明を捧げた。
家の窓からこぼれる光は
安心や愛情を感じることができる。

古代から光は生命や希望の象徴で
闇は怖れと忌み嫌うものと結びつき
光はそれを押し返す存在であり
神聖なものでもあった。

御堂筋イルミネーションは賛否両論
けれど古来から受け継がれてきた
「光に意味を託す文化」
そのひとつなのかもしれない。

普段は仕事のフィールドである御堂筋。
大阪のメインストリートで
日常と非日常が光で演出されている。
単なる照明に照らされた景色ではなく
人間がずっと心の中に灯してきた感情を
都市空間に可視化している。

毎年テーマがあり、新しい試みもあり
変化し続けているけれど
基本的な部分はずっと変わらない。
ただ美しいだけでなく
人の心の中に育まれてきた祈りや想い
いろいろな感情が戻ってくる。

華やかだけれど、どこか静かで
人も車も穏やかにゆっくり動いていく。
冷たい凛とした空気の中
降り注ぐ光に包まれて
この一年を振り返ってみませんか。

色づく葉

紅葉の時期もすぎて
風が吹くたびに枯れ葉が散って
すっかり冬の景色です。

同じ色が変わる葉でも
赤くなる木と黄色くなる木が。
どちらも好きだけれど
ちょっと気になった。

まず見ての通り色素が違う。
秋になって赤くなる木は
アントシアニン(赤)を新しく作る。
糖分が葉に多く残りやすい性質らしい。
カエデ・モミジ、ナナカマド、
ハゼ、サクラなど

そして黄色くなる木は
もともと葉に黄色があり
カロテノイド・キサントフィル(黄)が主役。
秋になりクロロフィルが分解されると
自然に黄色が見えてくるだけ。
イチョウ、カラマツ、ポプラ、ケヤキなど

植物はとっても賢いので
そのあたりには植物側の戦略もある。

赤くなる木は赤のアントシアニンで
強い光や寒さから葉を保護し
「日焼け止め」的役割で
酸化ストレスを抑えて
栄養を幹や根にまわす時間を稼ぐ。

黄色くなる木の黄はカロテノイドで
光合成を助ける補助色素。
夏から存在して特に防御用ではない。

同じ木でも色が違う葉がある。
日当たりがいいと赤くなり
日陰だと黄色から茶色で終わる。

昼暖かく夜冷えると赤くなり
急な霜・低温だとそのまま散る。

また土が適度に乾燥すると
きれいな赤になりやすく
肥料が多く、湿りがちだと
黄色から褐色になりやすい。

言いかえると…
赤は作られる色。
黄は元々ある色。
赤は保護のための色。
黄は素の姿。

なんとなく
人間に似ている気がする。

見る人を癒してくれる紅葉にも
ちゃんと意味や役割がある。
それでいて美しい。

四季のある国だから
感じることが出来る。
日本に生まれてシアワセと思う瞬間。

干し柿

7年ぶりに干し柿を作った。
両親の大好物だったので
コロナ禍前は毎年作っていたけれど
ずっと作っていなかった。

毎年、宮津でいただいた柿を
ベランダの軒下に吊るしていた。
「明日は食べ頃」と楽しみに
翌朝ベランダに出ると
何度か干し柿が消えていた。
 
カラスは賢くて食べ頃にもっていく。
そして両親に残念なお知らせをする。
そんな年も多かった。
両親が居た最後の年の干し柿も
食べたのはカラスだった。
 
一人だと、たくさん要らないので
ずっと作っていなかったけれど
今年は綺麗な干しやすい柿を頂き
以前と違う方法で吊るしてみた。
干し柿の仕上がりに加えて
カラスとの知恵比べを楽しんだ。

使っていない部屋の窓際に吊るし
窓をあけて風を通しておいた。
網戸があるからカラスは来ない。
きっとカラスはどこかで見てて
あれこれ考えただろうけど
さすがに網戸を破ってまで
持っていくことはなかった。

通りに面した窓に吊るしていたので
ご近所の人生の大先輩方が
「懐かしいなぁ。昔は作ったなぁ」
と、毎日家の前を通るたび
2階の窓を楽しみに見て下さった。

ちょっと色は黒いけれど
カビも生えず、カラスにも盗られずに
甘くて美味しい干し柿が
16個出来上がった。

出来上がるまで毎日見て下さった
ご近所にお裾分けをして手元には3つ。
美味しくて、もう食べてしまった。

ご近所さんも一緒に楽しめた干し柿。
来年はもっとたくさん
通りに面した窓に吊るそう。

上本町駅の鳩

自宅が駅から近いこともあり
通勤にはほとんど電車を使う。
近鉄大阪線で上本町駅まで行き
そこから晴れの日はぶらぶら歩き
雨の日は地下鉄谷町線を使う。

上本町駅は近鉄大阪線の終点。
近鉄百貨店上本町店
新歌舞伎座・近鉄YUFURA
シェラトン都ホテル大阪
かなりコアなハイハイタウンもある
なかなか使えるターミナルだ。
 
駅上のバスターミナルからは
関西空港、大阪空港直行バスがあり
空港へのアクセスもいい。
関西・大阪万博期間中は
直行バスが大人気だった。

買い物も食事もほぼここで完結できる
子供の頃から馴染みの駅。
規模も地上7面6線・地下2面2線の
実は日本で第3位のターミナル。

この上本町駅には鳩もいる。

朝の通勤時間に座れることはないけれど
仕事からの帰宅は始発駅で乗るので
確実に座って帰ることができる。

先発・次発・次々発あたりまで
出発待ちの電車が常時停まっている。
改札から先頭車両まで8両編成でも
ホームを軽く200mほどは歩く。

ホームを歩いていると
停車中の電車の開いた扉を
出たり入ったりしている鳩がいる。
かなりの確率でこの鳩達に会う。
人が乗ってきても慌てない。
慣れ切ってるので車内を歩き
気が向いたらどこかの扉から出ていく。

たまに、降り損なったのか
一駅キセルするつもりの確信犯か
本人に聞いてみた事はないけれど、
次の鶴橋駅まで乗って行く鳩がいる。
 
JR環状線・地下鉄との接続駅なので
かなりの人が乗車してくるけれど
開くと「降車優先!」とばかりに
胸を張って降りてゆく。
 
鶴橋駅に住んでいて帰宅したのか
鶴橋駅までお出かけしてきたのか。
車内で慌てている鳩を見た事がない。
私が利用するのは各駅停車なので
準急、急行、区間急行、快速急行を
利用する鳩がいるかどうかは不明。

可愛いなんて思ったことはない。
でもなんとなく面白くて
いつも駅のホームを歩きながら
無賃乗車する鳩を探している。

手帳

「今年もあと半年」と
つい先日まで言っていた。
でも気がつけばもう10月後半
2025年もあと2ヶ月と少し。
 
来年はもっと計画的に過ごそう。
毎年そんなことを言いながら
結局あっと言う間に年末を迎える。
 
でも手帳を見返すとそれなりに
いつだって公私ともに忙しい一年を
繰り返している気がする。
 
もう随分前から同じ手帳を使ってる。
薄く効率的に作られた手帳。
毎年色を変えているけれど
中身は同じ10月始まりの手帳。
人間が昭和なので週の始まりは日曜。
 
若い頃は1月始まりが好きだった。
でも予定の多い年末年始に
手帳を2冊見るのが面倒なので
10月始まりの手帳に変えた。
 
余裕のある9月末に準備して
ワードネットの創立記念日10月1日に
新しい手帳で新しい年度をスタート。
これが毎年恒例になっている。

スマホのスケジュールも使っている。
ジャンル別に色を変えて
スケジュール管理をしている。
遡ると2011年の予定まで
ちゃんと残っている。
 
でも紙の手帳は全く別もの。
細かいことまで書きこんで
ちょっとした日記に近い気がする。
 
スマホのスケジュールを見て
「そうだったなぁ」と思い
当時の手帳を探して開くと
その時の状況や心情的なこと
色々な情報が簡単に書かれていて
当時の光景が浮かぶ。
 
人生の大きな節目、冠婚葬祭
胸が痛くなるようなことも
簡単な言葉で手帳に書かれている。
 
AIが日常に使われ、技術が進んで
色々なことが効率的に処理されても
その瞬間を簡単な言葉に詰め込んで
書き込んだ文字にはかなわない。

新しい手帳は赤がベース。
楽しいこと、素敵なことを
たくさん書き込めますように。

万博

あと数日で大阪・関西万博も閉幕。
計画段階からすったもんだと
マイナスな話題が多かったけれど
予想をはるかに超えた来場者で
赤字も充分回避。
 
開幕前の「並ばない万博」は
「かなり並ぶ万博」になったけれど
どれだけ並んでもいい…と
何度も足を運んだ方が多くいる。
 
個人的には人混みが超苦手で
観光地での名物や名勝も
「並ぶならもういいかな」と
前まで行っても撤収するタイプ。

大阪・関西万博も最初から
「行かない気満々」だった。

そういう困ったヤツと知りつつ
「次回の日本で開催の万博は
 あの世からしか見れない」と
あれこれ計画してくれた人がいて
ただ後ろにくっついて行った。
   
大屋根リングとガンダムを見たら
帰ってもいいと思っていたが
9月末にもかかわらず
朝のゲートも10分足らずで通過。
予約不要のパビリオンを8つ。
花火も見てすんなりゲートを出て
10時すぎには家でゆっくりしていた。
 
大人気のミャクミャクも買わず
ナイジェリア館で民芸品をひとつ買い
お昼ごはんはファミマのおにぎり。
あちこち見て、色々な文化に触れ、
メッセージをたくさん受け取った。 
 
4つあるコモンズ(共同館)は
それぞれ知らなかった国もあり
経済・文化や国際情勢をはじめ
地域の複雑な事情なども
初めて知ることがたくさんあった。

ふと思った。

趣向を凝らした展示は別として
メジャーな国のことは
基本的なことも国際情勢も知っている。
でも決して裕福でないであろう国が
日本まで来て自国を紹介するブースは
見るべきブースだったのではと。
 
それぞれの楽しみ方がある。
お祭りとして楽しむことも素敵。
スタンプラリーも楽しい。
全館制覇を目標にがんばるのもアリ。
  
日本の木造建築技術を堪能した。
アムロが乗るにはちょっと小さいが
大好きなガンダムに会えた。
そして知らない国とも出会えた万博。
素敵な時間だった。

銀行

ここ数年事務所界隈でも
海外からの旅行客をよく見かける。
あちこちにビジネスホテルがあり
リノベーションされた町家・長屋
マンションを利用した民泊も多い。
 
オフィス街、長く続いた商業の町
そして生活の場所でもありつつ
大坂城と心斎橋界隈との間に位置し
熊野街道・暗越奈良街道を歩けば
色々な時代の歴史の重なりを
そこかしこに感じることができる。
  
残念なことに消防法上の問題で
長屋や町家が次々に取り壊され
ビルやマンションの建て直しもあり
どんどん町並みが変わっている。
 
変わったと言えば…銀行。
長堀通には銀行がたくさんあった。
厳密には「窓口のある銀行」
  
前事務所は「大和銀行」近くだった。
「りそな銀行」に名称変更された直後
3店舗が統合されて
口座はかなり離れた店舗に
勝手に引っ越してしまった。

そこでメイン口座を
「三井住友銀行」に変えた。 
数年前にここも統廃合となり
跡地はマンション建設中。
 
さすがに振込や移動はネットだが
会計上、通帳記帳が必要なので
残りページが無くなったら
「窓口のある店舗」のATMに
新通帳発行にいく。 
 
この数十年で銀行関係の雑用は
とっても便利になったが
情報をもらったり相談したり
そんなコミュニケーションがない。
銀行だけではなく何もかも
便利になってきたけれど
不便なアナログがすこし懐かしい。

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2025年10月1日
有限会社ワードネットは
30周年を迎えます。

阪神淡路大震災の年に設立し
いろいろな事がありましたが
多くの方に支えていただき
30周年を迎えることができました。
振り返ると感謝しかありません。
本当にありがとうございました。

これからも
どうぞよろしくお願いいたします。

WORDNET
代表取締役 市井利依

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デビュー

今年の夏は本当に暑かった。
いや、9月になっても
まだまだ過去形ではなく暑い。
 
外に出ると無意識に日陰をさがす。
大好きな通勤路もショートカット
地下鉄にあっさり乗ってしまう。

なんとなく町行く人を見ると
老若男女を問わず日傘をさしている。
長く生きてきたけど
今まで傘は雨の日だけのものだった。

8月の休日出勤の帰り道
地下鉄と私鉄の乗り換えで通る
デパートの「日傘コーナー」で
思わず立ち止まってしまった。

なんて軽い。なんて小さい。
これで晴雨両用?と感動。
「雨の日も使えるもんね」
…という言い訳が背中を押してくれた。
ついに「日傘デビュー」だ。

ところが買ったものの
電車を降りてバッグから取りだし
広げるのが面倒くさくて
太陽を浴びたまま突っ切っていた。
 
9月のある日の午後。
取引先へ西に向かって
駅から15分ほど歩く時に
やっと日傘デビューした。
結局、初めて使ったのは9月。
 
ちなみにデビューの語源は
フランス語の「début」
「dé-」(離れて)と「but」(目標)で
まだ目標に遠い状態のことで
つまり「物事の始まり」の意味。
もともとはビリヤードの
最初の一打の意味だったらしい。

使うと快適。
そんなに大層なコトだったのか?
もっと早く使えばよかった。

水都大阪観光

万博で賑わう大阪。
大坂城や通天閣、心斎橋だけではなく
オフィス街でも観光客を見かけます。
 
海外からの方は別として
他府県から万博に来られる方には
「水都大阪」も楽しんで頂きたい。
 
以前このDIARYでも
いくつか運河をご紹介しましたが
大阪にたくさんある運河は
秀吉の時代に整備されたものが中心
 
大坂城築城に伴う城下町の拡大で
水路中心に都市計画が進められました。
特に大川を中心に多くの運河を掘削。
そしてこの運河が米や物資を運ぶ
舟運ネットワークになっていきます。 

大阪は江戸時代に商業都市へと発展し
船場や中之島などが経済の中心に。
「天下の台所」の誕生です。
 
全国の年貢米が舟で運ばれ
蔵屋敷に集まり米相場の形成にも。
中之島周辺や道頓堀川などには
今もその名残が色濃く残っています。
 
さて、水都大阪の観光です。

陸と水上の両方から景観を楽しめるのは
水陸両用バス「大阪ダックツアー」
 
水都大阪の歴史を感じる観光なら
舟での観光がオススメ。
大川や道頓堀川を運行する観光船
「アクアライナー」
「とんぼりリバークルーズ」

舟からレトロ建築群や夜景を眺め
米や物資が運ばれた「天下の台所」
その舟運を追体験できます。

ちょっとお値段はお高めですが
水都大阪ならではの体験が。
大坂城や通天閣、心斎橋にプラス
「水都大阪」観光はいかがでしょう。

白蓮

毎年7月~8月の朝
藤原京跡の蓮の花に会いに行く。

紅色。淡い桃色。
白。絶妙なグラデーション
同じ色はひとつもない気がする。
 
水面が多くの葉で覆われ
見えない水面下にある根は
地下茎とも呼ばれて
泥の中を這うように伸び
太い茎のようになっている。

暑い夏に涼しい顔で
背筋を伸ばして咲く蓮の花。
夜明けに蕾が開きだして
太陽が昇りきると閉じる。

その風情からは
想像できない水面下。
そのギャップも含めて
愛してやまない花。

夜明けに蕾が開く時
「ポン」と音がする。
数年前に一度だけ
藤原京跡で聴いたことがある。

先日はじめて「白蓮」を見た。
葉も蕾も花も
びっくりするほど大きい。
「高貴」という言葉でしか
表現できない風情。

「蓮は濁りに染まらず」

仏教の世界観や象徴性と
深く結びついている意味が
わかる気がする。
  
白蓮が開く瞬間
そこに居たい。
蕾が開く音を聴きたい。
 
蓮の季節が終わる前に
その一瞬のために行く
きっととびきり贅沢な
夏の朝になる。