まわり道

通勤路や事務所界隈一帯には
ほんの少し裏にはいると
上町台地に重なった歴史を
感じる場所がたくさんある。
  
通勤途中で路地や裏道があると
迷いなく吸い込まれてみる。
全く方向の違う路地に入ったら
その先で道が曲がっていて
道なりに表通りに出てみたら
ショートカットだったりもする。
  
その先がどうなっているか
予想はできるのだけれど
タイムトンネルのように
違う時代に繋がっていたり
全く違う場所へ出たら素敵だなと
いつも期待しながら歩く。
    
通勤路にたくさんあった
古い町屋もずいぶん取り壊され
昔話を聴かせてくれた
顔見知りになった人生の先輩も
会えなくなった方が増えた。
  
でもこの界隈には
いまも往時を思わせる風景が
色濃く残っている。
  
あれこれ想像しながら
まっすぐ歩けば20分の通勤路を
倍以上の時間をかけて歩く。
 
直線距離に近い道を歩くと
確かに早く到着する。
でもグルグル歩いているから
出会える場所やコトもある。

無駄に見えても
たくさん素敵なプレゼントを受け取り
朝からご機嫌で事務所に着いたり
気分よく家に帰れたりする。
 
人生も同じかもしれない。
まわり道や無駄に見えることが
本当はとっても大切なことで
意味があるのではないかと。

苔とサボテン

以前このDiaryに登場した
我が家に長くいるサボテン。 
 
数年前から赤ちゃんサボテンが
たくさん誕生するようになった。
お母さんサボテンは近いうちに
枯れてしまうのだろうと思った。
でもお母さんも元気で
赤ちゃんも増えた。
   
5月頃の大雨のあと
赤ちゃんサボテンがコロコロ床に落ち
手頃な鉢がなかったので
木が枯れて、苔も乾いた
ミニ盆栽の鉢にのっけておいた。
  
他の鉢植えと一緒に水をあげていたら
枯れたと思っていた苔が緑になり
眠りから覚めたように元気になった。
  
この苔とサボテンのペア。
無責任にポンと置いたけれど
よくよく考えると
本人たちにすれば迷惑な話。
 
湿気が好きな苔の上に
乾燥が好きなサボテン。 
  
サボテン用の鉢を用意するつもりが
どちらも元気だし
仲良くやっているようなので
このまま見守りたくなった。
 
いざこのままとなると
水は?光は?置く場所は?
どちらの好みに合わせる?
あれこれ悩んだ結果  
台所の窓際に置いてみた。
 
直射日光は当たらないけれど
光が入り明るく、風遠しもいい。
カラカラに乾かないし、
湿ったままにもならない。
つまり中途半端な環境に置いてみた。
  
水はサボテンにかからないように
小さな霧吹きで苔にしっかりと
かかるようにした。
  
あれから数か月。
苔の緑も濃くなり、
サボテンもスクスク育っている。
相反する環境を好むはずなのに
ちゃんと共存している。
与えられた場所と環境で
せいいっぱい生きてくれている。
  
苔とサボテンは
大切なメッセージをくれる。
 
環境を都合よく変えようとせず
自分たちも順応しながら
仲良くすればいいだけ…と。