道標

上町台地は多くの歴史が重なった場所。
毎日歩く通勤路にも
色々な時代の歴史が何層にも重なり
往時を偲ぶに充分な歴史の名残が
有名無名を問わずたくさんある。
 
上町筋と谷町筋の間
熊野街道の少し東に道標がある。
東平北公園と東平南公園のあたり
交差点の角に立っている。
地図の表記は『熊野街道道標』
  
彫られた文字は風雨に削られ
もとより文字も難しくて
正しくは読めない。
でもそこは読める文字と位置関係
そして想像力を駆使して読んでしまう。
 
旅人はここで西を背に立つ。
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『右(南)は天王寺』
『左(北)は京橋から天満』
 ※もしくは京都へ(八軒家浜から船)
『上(東)は玉つくり』
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熊野に向かう人、戻る人。
暗越峠を越え大和へ向かう人。
それぞれに方向を示している。 
  
道標上部に彫られているのは
きっと東西南北にあたる
十二支の御本尊の梵字。
 
…とスーパー個人的な解釈なので
さらっと聞き流してください。
 
でも、ふと思った。
道標はそれぞれの方向が
どこへ向かうか示しているけれど
スマホも精密な地図もない時代に
人間はもっと想像力を働かせて
自分が向かう先を決めた。
  
そしてそれは
物理的なリアルな行き先だけでなく
自分がどこへ向かって生きるかをも
情報に振り回されずに
自分で考えて決めるべきと
教えてくれている。
 
片道たった2㎞の通勤路なのに
とんでもなく時間がかかる。
でもね…ちょっと立ち止まって
あれこれ考える時間はとっても贅沢。