源平咲きの桃

源平咲きの桃

自宅近くのそこそこ大きな公園。
遊歩道のある川の両側に公園が広がり
遊具や芝生のある癒しのスペースに
野球場やテニスコートも。
 
随分と昔からそこにあったであろう
枝を広げた大木がたくさんあり
子供の頃によく登って𠮟られた。
    
公園にはこれでもか!と言うほど
たくさんの桜の木がある。
春になると息苦しくなるくらいに
桜の花が公園中で咲き競う。
今年の桜も本当に見事だった。
 
子供の頃から桜の季節になると
公園を通り抜けて
一目散に会いに行く木がある。
桜ではなく公園の外れにある
大きな一本の桃の木。
   
1本の木にピンクと白の花が咲く
子供には魔法がかけられたような
不思議な桃の木だった。
 
「今年は白だけかも…」
 いやピンクだけかも…」
魔法が解けていないかドキドキしながら
急ぎ足で会いに行く。
  
中学生の頃この咲き方は
「源平咲き」と呼ばれると知った。
 
平安時代の源平合戦
源氏が白旗、平氏が赤旗だったことから
そう呼ばれるらしい。
桃をはじめ、梅・椿・躑躅にも。
   
どうしてそうなるのか。
生物学的な理由があるのだけれど
ぜんぜんロマンチックじゃないから
忘れてしまうことにした。
   
今年も淡いピンクと白の花が
1本の木で仲良く咲いている。
つかみどころがなく
美しすぎて切なくなる。
 
源氏と平氏の旗色が仲良く咲く。
とても穏やかで平和な春。
今年も咲いてくれてありがとう。
魔法がかけられた桃の木。