熊野街道の大木

通勤路に巨大な木がある。
正確には通勤路の路地にある。

よく言う大木とは存在感が違う。
熊野街道を機嫌よく歩いていると
大きく腕を広げた太い枝が見える。
そこには公園も植え込みもなく
細い路地の両側に町屋があるだけ。
木は家々に覆い被さって枝を伸ばす。
 
路地は私有地だから、
手前の公道を行ったり来たりしながら
背伸びして見ようとしても幹が見えない。
どこから生えてる?
意を決してそっと路地に入らせて頂いた。
 
路地の南側から見ると
枝は町屋の庭から伸びている。
北側にまわって見ると
表側と同様に、家を押しのけて
通りにせり出して庭から伸びている。

その太い枝を伸ばしているのは
直径が、町屋の奥行きほどの幹を持つ木。
「庭は窮屈すぎる」と言わんばかりに、
町屋に覆いかぶさっている。
 
大阪市内でこれ以上大きな木は
見たことがない。
いつ頃から立っているのだろう。
もちろん家が後から建ったのだろうけれど
家を押しのけようとしている。
 
丹波篠山の安田の大杉ほど
高さはないけれど、
幹回りは同じくらいあるように思う。
そして樹勢旺盛なことと存在感は
安田の大杉に負けていない。
   
木の西側には大きなお寺の敷地
真横にはお寺の番神堂もあり
この木はご神木だったのかもしれない。
  
大きな木を見るといつも思う。
過ごしてきた時間を
見てきた景色を
語って聴かせてくれませんか?